こんにちは!
助産師のユイです。
これまでに新生児訪問や乳幼児健診、そして子育て支援センターなどで赤ちゃんの成長についてたくさんの相談を受けてきました。
このブログでは、最新の研究を元にパパ・ママの心配や疑問に答えます!
今回のテーマは「産後のセルフケア」です。
「骨盤の歪み」「骨盤矯正」という言葉をよく聞くようになりました。
確かに産後は骨盤をケアする必要性が特に高くなるタイミングです。
このコラムでは、どうして骨盤ケアが大切なのか?どのようにすれば良いのかなどを説明し、産後のセルフケアについてみなさんからよく質問される内容にもお答えします。
もくじ
どうして産後に骨盤ケア(矯正)が必要なの?
妊娠・出産によって骨盤が緩んだり歪んだりするため
骨盤はひとつの大きな骨に見えますが、実はパーツに分かれていてそれぞれが関節でつながっています。妊娠していないときは、骨盤はそれらがしっかりまとまって上半身を支えています。

しかし妊娠するとホルモンによって骨盤の関節はとても緩くなります。
骨盤の関節が緩むことで、お腹の中の赤ちゃんのために広さを確保したり、出産時には赤ちゃんが出られるだけのスペースを確保するためです。
関節が緩んだ骨盤は、妊娠・出産には好都合ですが、お母さんにとっては上半身の支えが緩んだ状態であるため、腰痛をはじめとしてさまざまな体の不調が起こります。
出産すれば、骨盤の関節を緩ませていたホルモンは出なくなるため、だいたい半年くらいかけて骨盤はもとの頑強な骨の塊に戻ろうとします。しかしこのときに以下のような生活をしていると、骨盤はうまく元に戻ることができない状態で固まってしまう可能性があります。
- 姿勢が悪い生活
- 姿勢の悪い状態で重いものを持つような体への負担が大きい生活
もちろん、骨盤が固まってしまってからでも骨盤ケアは可能ですが、固まる前に適切に骨盤をケアする方が結果は出やすいでしょう。
妊娠・出産によって体幹が弱ってしまったため
骨盤と体幹は密接に関係しています。
まずは体幹について説明します。
上の図のように、体幹と呼ばれている筋肉は腹横筋(お腹)、横隔膜、骨盤底筋群、多裂筋(背中)の4つで構成されています。
その中でも多裂筋以外の3つの筋肉が特に重要なので少し詳しく解説します。
腹横筋:4層あるお腹の筋肉の中で、もっとも内臓側にある筋肉。妊娠によって引き延ばされたことで産後は引き締める機能がかなり弱くなっている。「天然のコルセット」と表現されることもあり、腹横筋が締まるとウエストが引き締まり、腰が楽になる。
横隔膜:呼吸するときに使う筋肉。妊娠中に子宮が大きくなったことで横隔膜の動きが制限され、産後も動きが悪い状態が続きがち。
骨盤底筋群:骨盤の下側で、ハンモック状に膀胱・子宮・直腸を支えている。妊娠中の子宮の重みや分娩時に強く引き伸ばされたことで産後は引き締める機能がかなり弱くなっている。尿漏れなどのトラブルと関係が深い。
このように、妊娠・出産によって、お母さんの体幹はかなり弱っていることがほとんどです。
体幹は全身を支える要の筋肉です。体幹筋がしっかりしていると姿勢は整い、体幹と一続きになっている骨盤も良い位置や向きに整えられ、いわゆる「骨盤の歪み」がない状態となります。
つまり、産後はできるだけ早く体幹を取り戻すことが、骨盤を正しい位置に戻すための助けとなるのです。
産後に骨盤ケア(矯正)をしないとどうなってしまうのか
基本的に、私たちの体は良い状態に戻ろうとする力があります。
産後にリラックスして副交感神経が優位な状態で過ごすことができ、疲れを感じたら横になり、血液循環を良好に保つために体を冷やさず適度に運動し、十分な睡眠をとって重いものを持つような無理をせず…と、自然と体が戻っていく経過を妨げない産後の体に優しい生活を送ることができれば、骨盤も良い状態に自然と戻っていく可能性が高くなります。
でも、実際には産後にそのような過ごし方をできる人はほとんどいないかもしれません。
赤ちゃんは昼夜逆転しがちで、抱っこが大好き、疲れていても自分が頑張るしかなく…という生活がほとんどでしょう。
寝不足や緊張など体に負担が大きい生活は、体幹の戻りを悪くし、姿勢は崩れ、筋肉は凝り固まり、骨盤が戻ろうとする力の妨げになります。
骨盤の状態が悪ければ、体幹機能はより使いづらくなり、姿勢は悪く、ほかの筋肉を代用することで凝りや痛みが強くなる…という悪循環になります。
また、体幹が使えなければぽっこりお腹も改善せず、ついてほしくないところに筋肉がつき、引き締まってほしい部分はプヨプヨのままにもなりがちです。
さらに、骨盤とつながっている骨盤底筋群は、膀胱・子宮・直腸を支えているためこれらの筋肉の働きが弱いと尿漏れ等になりやすく、特に更年期を迎えたころに悪化して尿漏れだけでなく臓器脱(膀胱・子宮・直腸が下から出てきそうになる)になることもあります。
これらから、産後は意識的・積極的に骨盤ケアをすることが大切です。
産後すぐにできるセルフ骨盤矯正エクササイズ
まずは骨盤の正しい状態を知ろう
上の図は、理想の骨盤(①)と、ケアが必要な骨盤の代表的な例(②③)です。
妊娠中は子宮の重みで②のようにお腹を突き出し腰が反った状態になり、産後もそのクセが続いている方が少なくありません。
そして、立っているときは②の状態、座った時は③のように猫背になって骨盤が後ろに傾いているような②③の両方を併発しているケースもよく見かけます。
②と③は骨盤の向きは真逆なので両方を併発というのは不思議な感じがするかもしれませんが、実は両方とも体幹が使えていないことが原因なので、立った時は前傾、座ったときは後傾などとなることは珍しくありません。
また、体幹が使えていないため、下腹を指で押してみるとポッコリ・ぷにぷにの状態になっていると思います。これでは産後のお腹が引き締まることは難しいでしょう。
骨盤の前傾・後傾を矯正するエクササイズ
骨盤は、体幹を使ってよい姿勢をとったときに理想の位置・傾きに近づきます。
そのため、骨盤ケアには妊娠・出産で弱ってしまった体幹を取り戻すことが重要です。
体幹のトレーニングは腹式呼吸を使って以下のように行います。
- 膝を立てて仰向けになる
- 軽く息を吸ったら、「ふ~」と細く長く吐き切る(10秒程度)
- 息を吐くと同時に、下腹を薄く、硬くしていく
※1回1回時間をかけてしっかり吐き、10回程度行いましょう。
※手を下腹の上に置いておくと、下腹に意識が行きやすくなるのでおすすめです。
一番のポイントは息を最後まで吐き切ることです。
すると下腹を薄くするために腹筋の一番深いところにある腹横筋をよく使うことになります。
また、息を吐くことで横隔膜も良く動きます。
この、腹横筋と横隔膜は体幹の4つの筋肉のうちの2つでしたね。
しっかり吐き切ってお腹を薄くすると、とても疲れると思います。つまり腹式呼吸は体幹を鍛える筋トレなのです。
また、体幹の4つの筋肉のうち、もうひとつの重要な筋肉として「骨盤底筋群」がありました。
骨盤底筋群は産後は特に意識的に動かす(鍛える)ことが難しい筋肉なのですが、他の体幹筋と連動する性質があるため、腹式呼吸で腹横筋と横隔膜をしっかり鍛えると実は骨盤底筋群のトレーニングにもなります。
腹式呼吸をしながら骨盤底筋群も意識して動かすことができればベストですが、まずは骨盤底筋群が動いている感覚を腹式呼吸を練習しながら探すことから始めると良いでしょう。
さらに、息を吐きながら腰と床の間の空間(腰のアーチ)を押しつぶし、恥骨が少し天井方向へ移動する感覚を感じ取ってみてください。
体幹を鍛えることで、骨盤の位置が自然と整っていく感覚を実感できるでしょう。
骨盤ケア
ここではよくある骨盤ケアの疑問にお答えします!
Q1:産後の骨盤ケア(矯正)はいつから始めるとよいですか?
このコラムで紹介した腹式呼吸によるケアは、医師の許可さえあれば産後の入院中から始めることができます。場合によっては産後に安静が必要なこともありますので、必ず医師に確認してから始めましょう。
産後は帝王切開・会陰切開の痛みのほかにもさまざまな不定愁訴があります。回数やお腹の締め具合などを調整し、無理のない範囲で始めましょう。
余裕が出てきたら、Q4でご紹介しているように少し負荷を大きくしてみるのも良いでしょう。
Q2:整体などで骨盤のケア(矯正)をしてもらった方がいいですか?
整体などの骨盤のケアでは、骨盤を良い位置に矯正してもらえるため体幹を使いやすく(締めやすく)なります。
ただし、体幹は筋肉なので、鍛えなければ良い状態を持続させることは難しく、骨盤ケアを受けても、数日で元の状態に戻ってしまうことがほとんどです。そのため、何度も骨盤ケアに通う必要があります。
また、骨盤ケアで良い状態にしてもらった上で、その状態を持続させるために今回ご紹介したような体幹を鍛えるセルフケアを続けると、最も効率よく骨盤をケアできます。
Q3:骨盤ケアをしてくれる整体がたくさんあってどのように選べばよいかわかりません
実は「整体」には明確な定義がなく、国家資格も存在しないため、誰でも「整体師」と名乗ることができます。
一方で、「整体師」と名乗っている人の中には柔道整復師や理学療法士、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、看護師など医療の国家資格を持っている人もいます。
「整骨院」や「接骨院」なら、整体・骨盤ケアを謳っていることも多く、しかも国家資格である柔道整復師がいるため選択するひとつの目安になると思います。また、整体院でも上記のような国家資格をもった施術師がいる施設を選ぶのも良いでしょう。
Q4:骨盤ベルトは効果がありますか?
骨盤ベルトはさまざまな商品がありますが、骨盤と太ももの境目近くの出っ張りの「大転子」という部分をサポートするものがおすすめです。
特に、歩くときなどに骨盤が不安定に感じる方、骨盤ベルトで大転子を締めると楽になる、姿勢が良くなるなどを実感できる方は使用すると良いでしょう。
注意点は、ウエストを締めるタイプのベルトは使わないこと、ある程度体幹が戻ってきたら骨盤ベルトに頼るのではなく自力で姿勢を保つようにすることです。

Q5:この記事のトレーニングのほかにもおすすめの骨盤ケア(矯正)の方法はありますか?
今回ご紹介したトレーニングはもっとも基本的な方法ですので、産後すぐであれば今回の方法がいちばんのおすすめです。
慣れてきてもう少し負荷をかけたい場合には、以下の方法を試してみてください。
応用編①:仰向けで両手を「バンザイ」の状態にして腹式呼吸を行う
バンザイをしてみるとわかりますが、腰の反りが強くなり、床と腰の隙間が大きくなります。息を吐くときに下腹を締めながら腰の反りを潰すことを意識するとより負荷がかかって体幹を効率よく鍛えることができます。
応用編②:膝立ちの状態で腹式呼吸を行う
膝立ちになるとお腹の力を入れる方向が重力方向ではなくなります。また、骨盤底筋群は重力に逆らって持ち上げることになり負荷が大きくなり、そのぶん効果も期待できます。
また、膝立ちで腹式呼吸を行うときは、息を吐くときにお尻の筋肉も締めましょう。左右のお尻を真ん中に寄せる感覚、肛門を締める感覚です。

お尻の筋肉は、体幹筋と連動してほしい筋肉です。仰向けでの腹式呼吸に慣れたらぜひこちらの方法にもチャレンジしてみてください。
膝立ちでの腹式呼吸が上手になったら、さらに立った状態でも練習してみましょう。立った状態で体幹を鍛える腹式呼吸ができるようになると、食器を洗いながら、お散歩しながらなど「ながらトレーニング」ができるようになり効率がアップします。
まとめ
女性は筋肉が弱いため、体幹の崩れから「骨盤の歪み」と言われる状態になりやすいです。
特に妊娠・出産時、そして更年期がリスクが高くなる時期です。
そのため、産後に体幹や骨盤をケアすることはとても重要です。
せっかくのかわいい赤ちゃんとの暮らしを痛みのない楽な体で過ごすために、骨盤ケアを始めてみてはいかがでしょうか?
ラッキーインダストリーズについて
本コラムを運営するラッキーインダストリーズは1934年から続く日本の抱っこ紐メーカーです。POLBAN,pittoresk,Lucky 1934ブランドを展開し、子育てをサポートしています。このコラムを通じて、さらに多くの方々の子育てを支援できれば幸いです。
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