こんにちは!助産師のユイです。これまでに新生児訪問や乳幼児健診、そして子育て支援センターなどで赤ちゃんの成長についてたくさんの相談を受けてきました。このブログでは、最新の研究を元にパパ・ママの心配や疑問に答えます!
今回のテーマは「妊娠中のメンタルヘルスケア」です。女性は男性よりもメンタルの不調を抱えやすい傾向がありますが、特に妊娠~子育て期はハイリスクな時期です。妊娠や出産は「おめでたい」「喜ばしい」などプラスのイメージが強いため、つらい気持ちは理解されづらく、ひとりで抱えているうちにメンタルに不調をきたしてしまうこともあります。妊娠期間中にはメンタルのどのようなリスクがあるのか、また予防や改善方法などについてあらかじめ知っておき、いざというときに対処できるようにしておきましょう。
妊娠中はどんなメンタルの不調が起こりやすい?その症状は?
ここでは妊娠中にはどのようなメンタルの不調が起こりやすいのかをご紹介します。妊娠中は、体のつらさやさまざまな不安は当たりまえと思われがちなため、メンタルの不調を見落としやすくなります。妊婦さん自身はもちろん、周囲の人たちも注意しましょう。
マタニティブルー
妊娠中のメンタルの不調として「マタニティブルー」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。マタニティブルーは、妊娠中の一過性の気分の落ち込みなどのメンタル不調を指し、以下のような症状が多くみられます。
・情緒不安定で、急に涙が出ることも
・イライラや焦り
・やる気が出ない、無気力
・落ち込む、不安
・だるい、頭痛
・食欲低下
妊娠中のマタニティブルーが生じやすい時期は妊娠初期~中期頃で、つわりの症状が強い時期と重なることが多いです。正確な統計はないものの、妊婦さんの約半数程度が経験すると言われています。通常は一過性なので、時が経てば自然と症状は軽快しますが、悪化させないために心身ともにしっかりと休息をとることが大切です。
妊娠期うつ病
マタニティブルーは一過性の気分の落ち込みですが、うつ病(妊娠期うつ病)に移行することもあります。妊娠・出産・子育て期は特にうつ病を発症しやすい時期で、妊娠期うつ病は妊婦さんの20%近くに発症するとも言われています。
妊娠期のマタニティブルーは病気ではありませんが、うつ病は治療が必要な病気です。しかし、マタニティブルーとうつ病を見分けることは難しく、うつ病は産後の育児にも大きな影響を与えるため、精神的につらい状態が続くようなら早めにかかりつけ医に相談することが、妊婦さんのためにも生まれてくる赤ちゃんのためにも重要です。
パニック障害・強迫性障害など
パニック障害は突然の強い不安から始まり、動悸や心拍数の増加や、呼吸がうまくできず死んでしまうのではないかと思うほどの息苦しさに襲われます(パニック発作)。強迫性障害は、戸締りを何度も確認せずにはいられないなど、自分でも不要だとわかっている行動(脅迫行為)であるにも関わらずやらずにはいられなくなり、生活に支障をきたします。
妊娠のストレスや不安などが引き金になり、発症することもあります。ひとりで悩まず早く病院にかかるためにも、症状などを知っておくことが大切です。
妊娠中はなぜメンタルの不調が起こりやすいのか
妊娠中は、以下のように気持ち、体、神経などさまざまな変化が押し寄せてきます。ひとつひとつは小さなことであっても、それらが積み重なって大きなストレスとなり、マタニティブルーなどのメンタルの不調を引き起こしやすくなります。
不安や心配事が増える
妊娠すると「無事に出産できるのか」「元気な子を産むことができるだろうか」「ちゃんと母親になれるだろうか」などさまざまな不安から、ストレスを感じやすくなります。
体の変化が大きい
単に気分の問題というだけでなく、妊娠によって体がどんどん変化していくことでの体型への不安、つわり、そして腰痛をはじめさまざまな部分の痛み、便秘など身体的な不調も多く、それらもストレスとなります。
自律神経がバランスを崩しやすい
自律神経とは、内臓の動きをコントロールする神経です。交感神経と副交感神経の二種類があり、状況によって切り替わることで内臓機能やホルモンの分泌などを調節します。
妊娠すると妊娠に必要なホルモンが分泌されるため、ホルモンバランスが大きく変化します。脳のホルモン分泌をつかさどっている部分と自律神経を調節している部分は非常に近くにあるため、ホルモンの分泌に変化が起こることで自律神経がバランスを崩し、不安な気持ちや身体的な不調がさらに強くなります。
メンタルのセルフケアと治療
前述したとおり、妊婦さんの半数程度はマタニティブルーになると言われています。そのため、妊娠したら妊娠前よりもメンタルケアを大切にし、必要時には受診できるようにすることが重要です。
メンタルのセルフケア
ここでは、自分でできる妊婦さんのメンタルケアをご紹介します。
①自律神経を整える
自律神経が乱れるとメンタルも乱れがちになるため、自律神経を整えることが大切です。
1)生活リズムを整える
自律神経には「一定のリズム」が効きます。起床時間、食事の時間、就寝時間などのリズムを整えることで、自律神経が整います。
つわりやメンタルの状態によっては一定のリズムで生活することが難しいこともあるでしょう。そのような時には無理をしないことも大切です。
2)十分な睡眠時間と質の良い睡眠を心がける
睡眠不足や、質の悪い睡眠は自律神経の乱れにつながります。妊娠中は体への負担が大きいことや、ホルモンの変化などによって眠くてしょうがないと感じる方も少なくありません。十分な睡眠時間を確保できるようにしましょう。
逆に、メンタルが不調な時には眠れなくなることも多いです。眠れないときに「寝なければ」と思うとストレスになります。早めに受診してかかりつけ医に相談しましょう。また、スムーズな入眠やのための工夫として、起床時間から整える方法があります。まずは夜間あまり眠れず睡眠不足であっても、決めた時間に起床し、しっかりと朝日を浴びることから始めます。朝日を浴びるとその14~16時間後に眠るためのホルモンである「メラトニン」が分泌され、良質な睡眠につながります。就寝時間の1~2時間前にぬるめのお風呂(38~40度程度)に15~20分ほど浸かると入眠しやすくなり睡眠の質が上がります。就寝2時間前くらいからはスマホ等の操作をやめられれば理想的です。
無理せずできそうなところから、少しずつ変えてみましょう。
3)体を冷やさない生活を意識する
体が冷えると自律神経が乱れます。以下の方法で体を温めましょう。
・湯船でしっかりあたたまる
お腹が大きくなってくるとお風呂洗いが大変になるので、シャワーで済ませることが多くなってしまうかもしれません。しかし、体を冷やさないためには、湯船で温まることはとても効果的です。水圧によるむくみの改善や、筋肉が温まって柔らかくなるため、腰痛や肩こりの改善も期待できます。
またお風呂以外でも、腹帯を使ってお腹を保温、携帯用カイロで腰などを温めるなど普段から体を冷やさないように工夫することも大切です。
・温かい食べ物・飲み物をとる
おすすめの飲み物は、ノンカフェイン・無糖で温かいものです。ほうじ茶、ルイボスティー、白湯などがあります。麦茶は体を冷やすので注意しましょう。また、体を温める食材は以下のようなものがあります。
野菜:玉ねぎ、ネギ、ニラ、生姜、にんにく、かぼちゃ、ごぼう、にんじん、イモ類など
たんぱく質:肉や魚などの動物性たんぱく質が特にお勧めです
夏野菜や南国で採れるフルーツは体を冷やすものが多いです。フルーツの中でもリンゴは寒い土地で採れるため、体を冷やさないと言われています。
②適度な運動
メンタルに効く、妊婦さんにおすすめの運動はウォーキングと腹式呼吸です。
1)ウォーキング
安全に行いやすく、ストレス解消できる上に自律神経も整えてくれるので妊婦さんに最もおすすめの運動です。ウォーキングシューズと動きやすい服装だけ準備すればすぐに始められるのもポイントです。一生懸命に歩けば体重コントロールにも効果的ですが、メンタルケアには、気持ちよく楽しめる程度でも十分です。
2)腹式呼吸で息を長く吐く
腹式呼吸は、鼻から息を吸い、吸った息は下腹に溜めます。吐くときは、吸うときの倍の時間をかけて口からゆっくりと、細く長く完全に吐き切ります。自律神経は基本的に自分の意思でコントロールできませんが、唯一呼吸を意識することで副交感神経を優位にすることができます。
③メンタルを整えるツボ
ツボの中には、押すことで自律神経が整いメンタルに効くものもあります。下図のように、各指爪の付け根の角(井穴:せいけつ)を痛気持ち良い程度の強さで各10秒程押しましょう。ツボ押し効果だけでなく、指先の血流改善にも役立ち、しかも気軽に押しやすいためおすすめです。
④ほかにもこんなことがメンタルに効きます!
・信頼できる人に不安や心配な気持ちを聴いてもらう
ひとりで紙に書きだすだけでも効果あります。
・休憩や眠ることが仕事!と割り切る
・「〇〇しなきゃ」をできるだけ減らし、ボーっとする時間を作る
上記はあくまでも例です。体調が良いときは規則正しい生活リズムが守れても、つわりの時期は起床時間にきっちり起きたり、朝ごはんを食べるのはつらいかもしれません。そんなときは、「ゴロゴロすることが今の私の仕事!」と割り切って、しっかり体を休めた方が良いでしょう。
また、妊婦さんのご家族など周囲の人は、以下のことを知っておきましょう。
・妊婦さんは、妊娠していないときと比べてとても眠くなりやすいこと
・たとえ妊娠が順調に経過していても、心身ともに大きな負担を抱えているため、普段よりも多くの休息が必要ということ
・不安や心配事は、信頼できる人に聴いてもらえると少し楽になることがあるということ(アドバイスは求めていないことが多いです)
迷ったら受診する
妊娠期のメンタルの不調は、産後の育児にも影響することが多いため、早めにかかりつけ医に相談することが大切です。前述したように、マタニティブルーと妊娠期うつ病を区別することは素人には無理です。もしうつ病であれば治療が必要です。
「妊娠中は受診しても薬を飲めないから…」と受診してもしょうがないのではと考える方も少なくありませんが、妊娠中でも服薬可能な薬はたくさんあります。しっかりと治療し妊婦さんを守ることで、生まれてくる赤ちゃんも守ることができます。
まとめ
妊娠は幸せなイメージが先行しがちですが、実はメンタルの不調をおこしやすい時期です。そのことを、妊婦さん自身はもちろん周囲の人たちも知っておくことで、予防や改善のためのセルフケアや受診につなげることができます。その時にできることからで構いません。ぜひ、今日からセルフケアを始めてみましょう。
監修:ラッキーインダストリーズ
ラッキーインダストリーズは創立1934年の日本で一番歴史ある抱っこひもメーカーです。長い歴史の中、多くの子育てをサポートしてきました。私たちの想いである「AMAZING LIFE WITH BABY」を元に、多岐にわたる社会貢献活動を実践しています。本コラムでの情報発信を通して豊かで実り有る子育てのサポートにつながれば幸いです。
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