こんにちは!助産師のユイです。これまでに新生児訪問や乳幼児健診、そして子育て支援センターなどで赤ちゃんの成長についてたくさんの相談を受けてきました。このコラムでは、最新の研究を元にパパ・ママの心配や疑問に答えます!
今回のテーマは「妊娠中の運動」です。妊娠中は運動をした方が良いとは聞いたことがあるけれど、どんなメリットがあるの?注意点は?そして具体的に何をすればいいの…?そんなよくある疑問にお答えします!安全で、そしてもちろん効果を感じられる妊娠中の運動・フィットネスを楽しみましょう!
妊娠中に体を動かすことの利点
妊娠中に運動をすることのメリットはたくさんあります。多くの方が特に気にするのが体重コントロールや、出産と産後に向けた体力作りですが、その他にも以下のようなメリットが挙げられます。
筋肉が適度に働くことで、腰痛などの体の痛みを予防・改善できる
筋肉は伸縮することで柔らかさと強さを保つことができます。運動せず、筋肉が硬くなってしまうと血流が悪くなり、痛みが出ることがあります。また、運動によって筋肉が鍛えられるとお腹が大きくなっても姿勢を良好に保つことができるため、腰痛などの痛みの予防に効果的です。
筋肉を動かすことで冷えの予防・改善になる
筋肉が伸縮することで血液を循環させるポンプの役割を果たし、血流改善に効果的です。さらに、筋肉が働くと熱を発生させるため、血流改善効果と熱産生によって冷えの予防・改善に効果的です。
自律神経が整いやすくなる
自律神経とは、内臓の動きを制御する神経です。交感神経と副交感神経の二種類があり、場面に応じて切り替わることで内臓機能やホルモン分泌などを調節します。主にリラックスしているときは、副交感神経の働きで内臓の動きや血液循環が良くなります。適度な運動をすることで、血流改善や深い呼吸、また程よい疲れが質の良い睡眠につながることなどから自律神経が整いやすくなります。自律神経が乱れるとイライラや不安、ストレスを感じやすくなったり、不眠や頭痛、腰痛、便秘などの不調が起こることがあります。
妊娠中は体への負担が大きくホルモンの変化などによって自律神経が乱れやすいため、適度な運動で自律神経を整えるようにすると良いでしょう。
妊娠中の合併症の予防
妊娠の合併症で運動によって予防できる可能性があるものに、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群があります。妊娠糖尿病とは妊娠中に発症する糖尿病で、妊娠糖尿病では赤ちゃんが大きくなりすぎて分娩のリスクが高くなったり、生まれてきてからも低血糖になりやすいなどさまざまな症状が出ることがあります。ママ自身も妊娠糖尿病では帝王切開になる可能性が高くなったり、妊娠高血圧症候群を併発しやすいなどのリスクがあります。
妊娠糖尿病は分娩後に血糖値が落ち着くことが多い一方、将来的に糖尿病になりやすいことがわかっており、予防が大切です。また、妊娠高血圧症候群は、妊娠中に突然血圧が高くなりママと赤ちゃんの両方の命に関わります。
妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群はさまざまな原因が複雑に絡み合って発症するため、運動によって必ずしも予防できるわけではありませんが、妊娠中の運動によってリスクを低下させることができるとの研究報告があります。
お腹の赤ちゃんにたくさんの酸素を送ってあげることができる
お腹の赤ちゃんは自分で呼吸をするのではなく、ママが吸った酸素を血流・胎盤を通してやりとりしています。運動することで深く呼吸をし、血流が良くなることで赤ちゃんにも酸素をたくさん届けてあげることができます。
妊娠中の運動の注意点
ここまで、妊娠中の運動はメリットが大きいことをご紹介しました。一方で、妊娠中の運動には注意点もあります。ここでは日本臨床スポーツ医学会が提言している「妊婦スポーツの安全管理基準」より、安全に運動をするためのポイントをご紹介します。
ママとお腹の赤ちゃんの健康状態についての注意点
・妊娠 12 週以降であること
・後期流産や早産の既往がないこと
・ここまでの妊娠経過にママも赤ちゃんも問題がない
・運動をしようとしている時点での体調不良がないこと
・主治医の許可を得ていること
運動をする環境についての注意点
・暑すぎる環境では控える
・できるだけ平坦な場所で運動する
・標高が高い場所での運動は避ける
おすすめのスポーツ・避けた方が良いスポーツ
おすすめのスポーツ:有酸素運動で楽しめるもの
例)ウォーキング,水泳,ジョギング,エアロビクス,ヨガ,ピラティス,固定自転車など
ただし、妊娠16 週以降では「仰臥位低血圧症候群」を誘発する可能性があるため、長時間仰向けになるような運動は避けましょう
※仰臥位低血圧症候群;妊婦さんが仰向けになることで、大きくなった子宮が太い血管を圧迫してしまい、低血圧や動悸など気分が悪くなること。血流が悪くなるためお腹の赤ちゃんに影響があります。
避けた方が良いスポーツ:球技などお腹に直接的な外傷を与えるものや落下のリスクがあるもの、ぶつかり合う可能性が高いもの、過度な腹圧がかかるもの
例)レスリング、柔道、走り幅跳び、棒高跳び、バスケットボール、バレーボール,サッカー,ラグビー、ウエイトリフティング、スキューバダイビングなど
運動前に確認しておくこと
・お腹の張りがないか、胎動はいつも通りあるか、心拍数が上がり過ぎていないかに注意しましょう。
運動中の心拍数は150回/分以下、運動強度は運動をしながらでも普通に会話ができる程度を目安としましょう。
・お腹の張りが少ない時間帯は午前 10 時から午後 2 時の間と言われており、運動に適した時間帯とされています。頻度は週 2~3 回、1回の運動時間は60 分以内ほどで行いましょう。
運動を中止した方がよい症状
運動をしている最中や運動後に以下の症状が現れた場合は、すぐにかかりつけの産婦人科を受診しましょう。
・不正出血
・お腹の張り
・破水したと思われるとき(すぐに電話しましょう)
・めまいや頭痛、胸痛などの体調の変化
・ふくらはぎの痛みや腫れなどの違和感
また、万が一運動中にお腹を強く打った場合には、必ず受診しましょう。
妊娠中におすすめの運動
ここでは妊娠中におすすめのウォーキングと、ウォーキング前の準備運動にもピッタリの自宅でできるフィットネスをご紹介します。
おすすめ自宅フィットネス
ここでご紹介する自宅でできる簡単フォットネスは、次項でご紹介するウォーキングを行う前の準備運動としてもピッタリです。
①足首回し
時間がないときでも、毎日これだけは続けてほしいエクササイズです。ゆっくり大きく回すことで、足首だけでなく、足の裏や甲、足指までほぐすことができます。
歩くときに足がしっかりと働いてくれることでケガや余計な筋肉の緊張を予防できる上に、足先まで動きがよくなるため冷え性の予防・改善にも効果があります。
【やり方】
座った状態で足の指の間に手の指をしっかりと入れて足首を回します。ゆっくりと大きく回すことがポイントです。
手の指を入れるときに、入れづらく感じる場合は、足の指の筋肉が凝り固まっているサインです。回しているうちに段々と血色がよくなり、足指の筋肉がほぐれていくのがわかると思います。
②腹式呼吸
妊娠中はお腹が大きくなることで体幹が弱くなりやすい状態です。腹式呼吸で体幹を強化しましょう。
【やり方】
鼻から大きく深くお腹に息を吸い、口から細く長く吐き出します。特に限界まで吐き切ることで体幹のトレーニングになり、腰痛やケガの予防としても役に立ちます。
③脇と背中のストレッチ
妊娠中は重いお腹を支えようと、背中や腰の筋肉が硬くなりがちです。筋肉が硬くなると痛みにつながりやすくなるため、ストレッチで痛みを予防・改善しましょう。
【やり方】
1.あぐらで座り、頭の上で右手で左手首をつかみ、息を吐きながら右へ引っ張ります。左の脇腹が伸びます。
2.手を逆にして、息を吐きながら右の脇腹を伸ばしましょう。
3.上げた手を、息を吐きながら前に伸ばし、背中~腰を伸ばしましょう。
※立ってストレッチをすることもできますが、その場合は安全のため、壁のそばなどで行いましょう。
④スクワット
スクワットは、体の中でも特に大きな筋肉であるお尻やもも裏がターゲットなので、効率良く筋肉を鍛えることができ、さらに股関節の動きも良くなるため分娩や産後の体力回復に役立ちます。
【やり方】
1.足を腰幅程度に開く。膝は足先と同じ向きになるようにします。特に膝が内側に入ってしまうケースが多いので注意しましょう。
2.妊娠中は体のバランスを崩しやすいので、テーブルや椅子などにつかまって行うと安心です。
3.お尻を後ろへ突き出し、口から息をゆっくりと吐きながら3秒ほどかけて股関節を折り曲げます。膝はつま先より前に出ないよう注意してください。
4.鼻から息を吸いながら、3秒ほどかけてゆっくりと元に戻ります。
ウォーキング
ウォーキングは全身を使う有酸素運動で、体脂肪の減少や持久力の向上が期待できます。
ふくらはぎは「第二の心臓」とも言われています。歩くことでふくらはぎの筋肉が血液を循環させるポンプとして働き、下半身の血液が心臓へ戻ることを助けてくれます。血流の改善や冷えの予防・改善にも効果的です。
いきなり歩き出すのではなく、できれば(1)①足首まわしと②腹式呼吸を行ってからウォーキングを始めると、安全にウォーキングを楽しめます。
【ウォーキングの注意点】
・ウォーキング用のシューズを必ず用意しましょう。正しい足の使い方をしやすくなり、ケガの予防にもなります。また、靴紐は足を入れてからしっかりと結び、足と靴をフィットさせましょう。
・服装は、動きやすければ特別に用意する必要はありません。汗が冷えると風邪をひきやすくなりますので、帰宅後は汗を拭いてすぐに着替えましょう。
・暗い時間帯は転倒のリスク、事故に遭うリスクが高くなります。明るい時間帯を選びましょう。
・コースは家の近所など慣れた道、平坦な道を歩きましょう。また、万が一気分が悪くなった時のことを考えて、ある程度人通りがあると安心です。
・汗拭きタオルや水分補給用の飲み物を持っていきましょう。両手が使えるようリュックサックを使うと安心です。
まとめ
妊娠中の運動は、安全に行うことがとても大切です。ここでご紹介したさまざまなチェックポイントを確認しながら、ぜひ楽しんで気持ちよく体を動かしましょう。妊娠中に体力をつけておくと、出産や産後にも良い影響がたくさんあります。できることからで十分です。ぜひ、今日から生活習慣として取り入れてみてください。
監修:ラッキーインダストリーズ
ラッキーインダストリーズは創立1934年の日本で一番歴史ある抱っこひもメーカーです。長い歴史の中、多くの子育てをサポートしてきました。私たちの想いである「AMAZING LIFE WITH BABY」を元に、多岐にわたる社会貢献活動を実践しています。本コラムでの情報発信を通して豊かで実り有る子育てのサポートにつながれば幸いです。
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