産後

心と身体を軽くする、助産師が教える産後ストレスへの対処方法 / 助産師監修

  • #助産師

更新日 2023/10/17

こんにちは!助産師のユイです。これまでに新生児訪問や乳幼児健診、そして子育て支援センターなどで赤ちゃんの成長についてたくさんの相談を受けてきました。このブログでは、最新の研究を元にパパ・ママの心配や疑問に答えます!

今回のテーマは「育児ストレスを軽くする方法」です。赤ちゃんはかわいいけれど、大変なこともたくさん!ここではストレスを減らして心も体も軽くなる、助産師ユイのオススメの方法をご紹介します。

育児ストレスのさまざまな原因と対処法


ストレスは痛みを増幅させ、気持ちを不安定にし、体にも心にも悪影響を与えます。ここでは出産や育児にまつわるストレスと、その対策をご紹介します。

産後の体が回復するまでの痛みによるストレス

分娩時の傷の痛みが退院後も続くと、痛みによって大きなストレスがかかります。ストレスは血流を悪化させ、呼吸は浅くなり、傷の治癒をさらに遅らせます。精神的にもマイナスが多く、痛みはできるだけ軽減することが大切です。

出産では帝王切開はもちろん、経腟分娩でも会陰切開や自然に切れたことで、傷の痛みを抱えたまま退院する方も少なくありません。会陰の傷は平均的には3~4週間程度で治癒すると言われており、帝王切開の傷も4週間程度で痛みもほぼ落ち着くと言われています。しかし元々の傷の程度や産後の栄養状態、睡眠不足、疲れなどによっては治るまでに時間がかかることもあります。また、傷に菌が繁殖して化膿したり、それが原因となって発熱することもあります。

退院後も傷の痛みが長く残っている場合や悪化しているように感じたら、まずは受診し身体に異変が起きていないかを確認しましょう。順調に経過している中での痛みであれば、痛みを改善するために薬を処方してもらえるか、または市販薬を利用しても良いかなど医師に相談しましょう。授乳のため薬を使ってはいけないと思われている方もいらっしゃいますが、授乳中であっても使える薬はあります。もし、医師に確認することが難しい場合には、「国立成育医療研究センター」のサイトで授乳中でも使える薬かどうかの確認や、電話・オンラインビデオ通話での相談(有料)をすることができます。

https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/index.html

痛みは身体的につらいだけでなく精神的な負担も大きくします。我慢しすぎず、自分の身体をいたわりましょう。

肩こり・腰痛・腱鞘炎などの痛みによるストレス

 特に産後早期の育児は、肩こり、腰痛、腱鞘炎など、体を痛めやすい状態です。慣れない育児で体が緊張していることも一因ですが、妊娠・出産で体幹が弱くなったために腰などに余計な負担がかかることも体のさまざまな部分が痛くなる大きな原因です。

体調に問題がなければ少しずつ体幹を鍛えましょう。産後早期にお勧めの体幹トレーニングは腹式呼吸です。

  1. 仰向けになる(膝を立て、肩幅に足を広げる)
  2. お臍と恥骨の真ん中あたりに手のひらを軽く置く
  3. 鼻から息を吸い、同時に手を当てている下腹を膨らませる
  4. ゆっくりと時間をかけて息を吐き切り、それと共に下腹を凹ませる

※お腹を膨らませるとき、凹ませるときに腰を反らないように注意してください。逆に腰を床に押し付けるよう意識すると良いでしょう。

※慣れると、座ったまま、立ったままでも腹式呼吸の体幹トレーニングができるようになります!

しっかりお腹を凹ませるとお腹が硬くなっていることがわかります。(指で下腹を押してみるとわかりやすいです)この硬くなっているお腹の筋肉が体幹筋です。また、呼吸をする際に使っている横隔膜も実は体幹筋の一部です。腹式呼吸ではお腹と一緒に横隔膜もしっかり動くため、効率良く体幹筋を鍛えられます。さらに腹式呼吸は自律神経を整えリラックス効果もあるため、育児で緊張している体がほぐれやすくなります。体幹を鍛えると共に体の緊張も解いてくれる腹式呼吸で、腰痛などの体の痛みを予防・改善しましょう。

母乳トラブルによるストレス

母乳育児をしている方にとって、母乳トラブルはとても大きなストレスです。特に新生児期は、お互いに慣れていない上に母乳の分泌が安定しないため、さまざまな問題が起こりやすいです。ここでは乳房・乳頭の痛みを予防し、赤ちゃんがしっかり母乳を飲み取ることができる授乳方法を確認しましょう。

1、授乳クッションなどで赤ちゃんと胸の高さをほぼ同じにする

母乳トラブルを回避するために最も重要なのは、乳頭・乳房を赤ちゃんの口に深く含ませることです。赤ちゃんがおっぱいよりも低い位置にいると、おっぱいが遠すぎて浅い飲み方(浅飲み)になり、乳房・乳頭の痛みの原因になります。そのため、授乳クッションなどを使って赤ちゃんの位置が胸の高さになるようにすることが重要です。赤ちゃんが小さいうちは授乳クッションを使っても足りないかもしれません。その場合はバスタオルなどを重ねて十分な高さを確保しましょう。

2、赤ちゃんの姿勢を正しくセットする

授乳クッションなどの上に赤ちゃんを寝かせたら、赤ちゃんのお腹とお母さんのお腹が向かい合わせになるように赤ちゃんの姿勢をセットします。よくある間違いは、赤ちゃんのお腹は天井を向き頭だけおっぱいの方向を向いてしまっている姿勢です。正しくは、頭から足まで全身がお母さんの方を向き、お母さんのお腹に赤ちゃんが巻き付くようにしましょう。

3、タイミング良く赤ちゃんをおっぱいに近づける

赤ちゃんの口がしっかり開いたタイミングで赤ちゃんをおっぱいに近づけて、口に深く含ませます。おっぱいを赤ちゃんに近づけるのではなく、赤ちゃんをおっぱいに近づけるのです。口に含むまで、赤ちゃんを支えていない方の手で乳房を軽く支えると、赤ちゃんは口に含みやすいかもしれません。正しい姿勢と方法で授乳することで、母乳トラブルやそれが原因のストレスを予防できます。

赤ちゃんの成長・発達に対する心配によるストレス

赤ちゃんの成長や発達に対する心配は尽きません。

・体重の心配

・離乳食を食べない

・首すわり

・寝返りをしない、ハイハイしない、お座りしない

・うつ伏せを嫌がる

…などなど、これまでに受けた相談内容は多岐に渡ります。

でも、心配することは決して悪いことばかりではありません。もしも赤ちゃんが治療などの支援が必要な状態であった場合に、気づいてもらえる可能性が高くなるからです。一方で、心配はストレスにもなります。ストレスが大きくなることで、せっかくのかわいい赤ちゃんとの毎日を楽しみにくくなってしまうかもしれません。育児の心配や不安は、ひとりで抱え込まず公的な施設に相談してみるのもひとつの方法です。

赤ちゃんや小さいお子さんについての相談を受け付けている施設は次のような場所があります。

・保健センター

・小児科

・自治体(役所・役場)の相談窓口

・子育て支援センター

・保育園

公的な施設への相談は、以下のようなメリットが考えられます。

・施設によってさまざまな資格(医師・看護師・保健師・保育士・心理士など)を持ったスタッフがいるので、いろいろな視点からのアドバイスがもらえる

・守秘義務があるので安心して話せる

・受診や検査が必要かどうかも含めて相談できる

1回の相談で納得がいかなければ、別の人や別の機関に相談するのも良いでしょう。心配事によっては成長を待つしかないケースもありますが、人に話すだけでも気持ちが軽くなるかもしれません。

産後うつ病を知っていますか?

産後うつ病とは

産後うつ病とは、分娩後数週間後~数か月以内に発症する抑うつ症状です。マタニティブルーは産後数日以内に始まり1~2週間程度でおさまる一過性の抑うつ症状であるのに対し、産後うつ病は症状が重く長期に渡り、ときには命に関わることがあるため治療が必要です。

日本産婦人科医会によると産後うつ病の罹患率は10%程度で、原因ははっきりわかっていません。妊娠・出産による急激なホルモン変化に睡眠不足やさまざまなストレスが加わって起こるのではないかと推測されており、産後であれば発症する可能性は誰にでもあります。もしかして産後うつ病かもと思ったら、出産または妊婦健診を受けていた産婦人科や、精神科、心療内科などをできるだけ早く受診しましょう。自治体の保健センターでも相談できます。

産後うつ病のチェック方法(EPDS)

1か月健診や新生児訪問などで「エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)」という質問用紙に答えた経験がある方は多いと思います。EPDSは産後うつ病の可能性を確認するためのツールで、日本周産期メンタルヘルス学会ではすべての産後の女性が行うべきであると推奨しています。ここではご自身や産後のご家族のこころの状態を確認できるよう簡易的にご紹介します。

※EPDSは本来は紙媒体で行う、書式の決まった質問票です。正確に行うためには保健センターや医療機関など、医療従事者の元で受けることをお勧めします。

【エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)】

ご出産おめでとうございます。ご出産から今までのあいだにどのようにお感じになったかをお知らせください。今日だけでなく、過去7日間にあなたが感じられたことに最も近い答えに〇をつけてください。必ず10項目に答えてください。

1)笑うことができたし、物事の面白い面もわかった。

(0)いつもと同様にできた

(1)あまりできなかった

(2)明らかにできなかった

(3)まったくできなかった

2)物事を楽しみにして待った。

(0)いつもと同様にできた

(1)あまりできなかった

(2)明らかにできなかった

(3)まったくできなかった

3)物事が悪くいったとき、自分を不必要に責めた。

(3)はい、たいていそうだった。

(2)はい、ときどきそうだった。

(1)いいえ、あまり度々ではない。

(0)いいえ、そうではなかった。

4)はっきりした理由もないのに不安になったり、心配した。

(0)いいえ、そうではなかった

(1)ほとんどそうではなかった。

(2)はい、時々あった。

(3)はい、しょっちゅうあった。

5)はっきりした理由もないのに恐怖に襲われた。

(3)はい、しょっちゅうあった。

(2)はい、時々あった。

(1)いいえ、めったになかった。

(0)いいえ、まったくなかった。

6)することがたくさんあって大変だった。

(3)はい、たいてい対処できなかった。

(2)はい、いつものようにはうまく対処しなかった。

(1)いいえ、たいていうまく対処した。

(0)いいえ、普段通りに対処した。

7)不幸せなので、眠りにくかった。

(3)はい、ほとんどいつもそうだった。

(2)はい、ときどきそうだった。

(1)いいえ、あまり度々ではなかった。

(0)いいえ、まったくそうではなかった。

8)悲しくなったり、惨めになった。

(3)はい、たいていそうだった。

(2)はい、かなりしばしばそうだった。

(1)いいえ、あまり度々ではなかった。

(0)いいえ、まったくそうではなかった。

9)不幸せなので、泣けてきた。

(3)はい、たいていそうだった。

(2)はい、かなりしばしばそうだった。

(1)ほんの時々あった。

(0)いいえ、まったくそうではなかった。

10)自分を傷つけるという考えが浮かんできた。

(3)はい、かなりしばしばそうだった。

(2)時々そうだった。

(1)めったになかった。

(0)まったくなかった。

EPDSは選択肢の点数の合計が9点以上であると、産後うつ病の可能性があるとされています。EPDSはスクリーニング検査(産後うつ病を発症している可能性のある人を見つける検査)であり、これだけで診断はできません。9点以上の場合や、9点未満でも気持ちがつらいと感じたら早めに産婦人科や心療内科、精神科などに相談することが、あなたとあなたの赤ちゃんを守ることにつながります。

 EPDSを行うことが推奨されている時期は、産後すぐや産後2週間、1か月頃と言われています。期間をあけて何度か行うことで、点数の変化から自分の気持ちの動きを推測することもできます。特に産後数か月間は産後うつ病を発症しやすい時期です。気持ちの変化に気を配りましょう。

まとめ

育児中は心や体の状態が引き金になってストレスが大きくなり、ストレスが大きくなったことでさらに辛さが増すという悪循環になりやすいです。この記事がその悪循環を断ち切るヒントとなって、心と体が少しでも楽になることを願っています!

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