こんにちは!助産師のユイです。これまでに新生児訪問や乳幼児健診、そして子育て支援センターなどで赤ちゃんの成長についてたくさんの相談を受けてきました。このブログでは、最新の研究を元にパパ・ママの心配や疑問に答えます!
今回のテーマは「妊娠中の尿漏れと頻尿」です。妊娠中に尿漏れや頻尿で悩む方は少なくありませんが、その原因や自分でできる尿漏れ対策、破水との見分け方などを紹介します。ぜひ参考にしてください。
妊娠中の尿漏れ・頻尿の原因は?~超初期&初期・中期・後期&臨月
女性は尿道が短いため、咳やくしゃみなどによって尿漏れすることは珍しくありません。これはお腹に力が入ることで、排尿を止めておく筋肉が腹圧に負けてしまうことで起こり、「腹圧性尿失禁」と呼ばれます。
そして妊娠すると、体にさまざまな変化・負担がかかることでさらに尿漏れしやすい状態となります。また、頻繁に尿意を感じる「頻尿」にもなりやすいです。ここでは妊娠中の尿漏れや頻尿の原因を、妊娠期間別に説明します。
妊娠超初期・初期の尿漏れと頻尿
排卵すると妊娠しやすい体に整えるために「黄体ホルモン」が分泌されます。そしてそのまま妊娠すると、黄体ホルモンは妊娠を継続できるよう子宮とその周辺の筋肉を緩めます。そのため、個人差はありますが妊娠超初期から尿道を締める筋肉(骨盤底筋群)が一緒に緩んでしまい、尿漏れの症状が出る場合があります。
そして妊娠2~3か月頃になると、全身の筋肉を緩めるホルモンである「リラキシン」が分泌され始めます。リラキシンも骨盤底筋群に対して効いてしまうため、尿漏れにつながりやすくなります。
また、これらのホルモンで尿道を締める筋肉が緩んだ結果、頻繁に「漏れそう!」という感覚になるため、頻尿になったと感じる方も少なくありません。
さらに、妊娠すると赤ちゃんにも酸素と栄養を送るため、妊婦さんの血液量が増え始めます。尿は血液の老廃物をこしとったものなので、血液量が増えれば尿の量も増え、よりトイレが近いと感じやすくなります。
妊娠中期の尿漏れと頻尿
妊娠中期はお腹が膨らみ始める時期で、大きくなってきた子宮が膀胱を圧迫し始めます。
妊娠中の尿漏れ・頻尿は、妊娠中期から始まったと話される方はとても多いです。さらに初期からのホルモンの影響も続いています。
妊娠中期になると、赤ちゃんの成長のために妊婦さんの血液量はさらに増加するため尿量も増加します。リラキシンによって骨盤底筋が緩み、尿道を締める筋肉が弱くなることで漏れそうな感覚を頻繁に感じます。
また、「トイレに行きたい」という感覚は膀胱に尿がたまることで感じますが、妊娠中期には大きくなった子宮が膀胱を潰し容量が減るため短時間で満タンを感じるようになり、頻尿となります。
妊娠後期・臨月の尿漏れと頻尿
妊娠後期は赤ちゃんが急激に大きくなる時期です。赤ちゃんの成長に伴って子宮も急激に大きくなり、膀胱はさらに圧迫されるため、半数以上の妊婦さんが尿漏れを経験するとも言われています。
妊娠後期には分娩に向けて骨盤底筋はますます緩み、また、赤ちゃんや子宮の重みによる負担で尿道を締める筋肉はかなり弱くなっているため、尿漏れがとても起こりやすい時期です。
妊娠後期は頻尿の訴えも非常に多い時期です。大きくなった子宮によって膀胱は妊娠中期よりもさらに圧迫されるためすぐに満タン状態になり、トイレが近くなります。
実は破水かも⁉尿漏れと破水の違い
妊娠中期以降は、「尿漏れだと思っていたら実は破水だった」という可能性も考えておくことが大切でしょう。
破水をすると、子宮内で無菌状態で守られていた赤ちゃんが子宮の外とつながった状態になります。破水に気づかず長時間放置することで、赤ちゃんや子宮が菌などに感染する可能性があり、母子ともに命に関わります。
陣痛が起きていなくても破水することは珍しくありません。特に子宮の上の方が破れた場合(高位破水)はチョロチョロと尿漏れのように羊水が流れ出るため、破水と気づきにくいことがあります。高位破水と尿漏れの違いは以下の通りです。
子宮口の近くが破れた場合には、明らかに多量の水分が出てくるため、破水とわかりやすいですが、一気に多量の羊水が流出することで赤ちゃんの負担が大きくなる可能性があります。様子を見ることなく速やかに産院に連絡をしましょう。
また、見た目やにおいだけでは判別がつきにくいことも多いです。破水か尿漏れか判別がつきにくかったり自信がない場合には必ずすぐに受診しましょう。
妊娠中・産後の尿漏れ対策
1章で紹介したように妊娠中にはホルモンや骨盤底筋群へのダメージによって尿漏れ・頻尿が起こりやすくなります。特に骨盤底筋群は経腟分娩でさらに大きなダメージを受けるため、産後に尿漏れをする方も少なくありません。
ここでは尿漏れ対策として、応急処置~根本的な対策まで紹介します。できることから実践してみてください。
今すぐできる応急処置
尿漏れの根本的な解決には骨盤底筋群の回復・強化が必要です。骨盤底筋群のトレーニングは(2)で解説しますが、効果を得るまでに時間がかかります。そのため、トレーニングをおこないつつ、まずは不快な状況を減らし、衛生的に過ごせるよう尿漏れパッドを利用するのがおすすめです。
生理用ナプキンやおりものシートで代用する方もいらっしゃいますが、尿漏れパッドは経血やおりものとちがって水分を素早く吸収する機能やアンモニアに対する消臭機能に優れています。そのため、尿漏れ対策には生理用ナプキンやおりものシートではなく、専用の尿漏れパッドがおすすめです。
膣や子宮の感染予防のためにも、パッドはこまめに交換しましょう。また、尿漏れが心配で水分を控えてしまう方もいますが、とても危険ですのでやめましょう。
根本的な対策は「骨盤底筋群」を鍛える!
尿漏れの根本的な対策は「骨盤底筋群」を鍛えることです。骨盤底筋群とは、尿が漏れないよう尿道を締めている筋肉です。膀胱・子宮・直腸を支えていますが、妊娠・出産で大きなダメージを受けているため尿漏れの原因になります。
骨盤底筋群のトレーニング方法
骨盤底筋群のトレーニングは、呼吸とともにおこなうと効果的に鍛えやすくなります。
以下の①②を繰り返しましょう。
①軽く息を吸ったら、息を吐くときは10秒前後時間をかけて吐き切ります。息を吐きながら「おしっこを我慢するときのように」骨盤底筋群をギュッと締めます。骨盤底筋群が締まるときには、おしもの筋肉が頭方向に上がってくるイメージです。
②息を吐き切ったら、吸うときには、ギュッと締めていた骨盤底筋群の力を抜いて緩めます。おしもの筋肉が足方向に下がっていくイメージです。
1セット10回程度を目安に1日3セット以上が目安ですが、回数は少なくても継続できることが一番大切です。骨盤底筋群はすぐに改善することは難しい筋肉ですが、妊娠中からトレーニングの習慣をつけておくと、忙しい産後も続けやすいかもしれません。
また、慣れるまでは骨盤底筋群の動きを感じることが難しい方がほとんどです。うまく動かせているかわかりづらくても、骨盤底筋群は呼吸と共に動くため「息を吐き切る」ことをしっかり意識しながら続けましょう。続けることがとても大切です。
産後の尿漏れ対策の注意点
産後1か月程度は、休息を十分にとることで出産で大きなダメージを受けた骨盤底筋群の回復が進みます。なかなか難しいかもしれませんが、自分の体の回復のためにもできるだけ時間をつくって横になりましょう。また、以下の点も大切です。
①産後1週間程度は膀胱に尿をため過ぎないよう早めにトイレへ
産後1週間程度は膀胱の神経が鈍って、ある程度尿が溜まっても感じにくくなっていることがあります。尿がたくさん溜まり過ぎて膀胱が大きく引き伸ばされると、膀胱の筋肉がダメージを受けて排尿に関するさまざまな問題が長引いてしまうかもしれません。産後1週間程度は、早め早めにトイレに行くようにしましょう。
②産後1週間以降は尿意を感じてからトイレへ
膀胱の神経のダメージが回復してくる産後1週間以降は、尿意を感じてからトイレに行きましょう。
排尿は、尿が溜まったことを感じてトイレに行き、「排尿しよう」と意識したときに出るのが正常です。産後1週間は膀胱に尿をため過ぎないよう早めの排尿が大切ですが、いつまでも続けていると正常なメカニズムが働きづらくなってしまいます。
③排尿時には腹圧をかけない
排尿は「出そう」と意識したときに骨盤底筋が緩むことで出てくるのが正常です。力んで(腹圧をかけて)出すことは、その自然な流れを崩してしまいます。赤ちゃんのお世話などで忙しいとは思いますが、自分の体の回復のためにも、腹圧をかけて急いで排尿することは避けましょう。
まとめ
いかがでしたか?妊娠中に尿漏れや頻尿になる理由は、たくさんあります。産後の尿漏れはすぐに良くならなくても骨盤底筋群のトレーニングを続けることで少しずつ改善していきます。時間はかかりますが、自分の体も大切にするために根気強く続けてみてください。
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