出産

出産の痛みをどうやって乗り越える⁉助産師が教える出産の痛み対策 助産師監修

  • #助産師

更新日 2023/09/16

こんにちは!助産師のユイです。これまでに新生児訪問や乳幼児健診、そして子育て支援センターなどで赤ちゃんの成長についてたくさんの相談を受けてきました。このブログでは、最新の研究を元にパパ・ママの心配や疑問に答えます!今回のテーマは「出産の痛み対策」です。

「出産の痛みを経験してこそ一人前の母親」などと言われることもありますが、決してそんなことはありません。痛みは体を緊張させ、赤ちゃんに送る酸素が減ります。そして出産の痛みによって産後の回復が妨げられ、育児にも生活にも影響が出ることもあります。1回の陣痛は長くても1分前後。そして休憩は1~2分です。陣痛で必要以上に体力を消耗せず、休憩中はしっかり脱力するというリズムができれば、産道は赤ちゃんが通りやすく柔らかく広がり、お母さんの体にも優しいお産になります。

ここではあなたと赤ちゃんを守るために、少しでも痛みを緩和しながら出産するための方法をご紹介します。妊産婦さんだけでなくパートナーも一緒に学ぶことで、安心につながり安産をサポートできます。ぜひパートナーと一緒に読んで、お産を安心して迎えられるよう二人で準備をしましょう。

呼吸法を使った出産の痛み対策

出産時の呼吸法は「ラマーズ法」と「ソフロロジー法」が有名です。ここではそれぞれの方法をご紹介します。呼吸法は妊娠中に習得することで、お産本番でも上手に行うことができます。ぜひパートナーも一緒に練習してみましょう。

ラマーズ法

「ヒッヒッフー」の呼吸で有名なラマーズ法は、呼吸に集中することで痛みの軽減を目指すため「心理的無痛分娩」とも呼ばれています。痛みへの不安は、痛みをより強く感じる悪循環を引き起こします。ラマーズ法では呼吸に意識を向けることで、痛みへの条件反射や余計な筋肉の緊張を和らげます。

【基本の呼吸】

①陣痛にまだ余裕があるとき

・陣痛がきたらゆったりと深呼吸を繰り返します。3~4秒かけて鼻から息を吸い、3~4秒かけて吐きます。

・呼吸に合わせて両手でお腹をさすります。

1、恥骨の左右に両手を置く

2、息を吸いながら、恥骨⇒両脇腹⇒みぞおちまで左右の手のひらでそれぞれ大きな半円を描く

3、息を吐きながら、みぞおち⇒おへそ⇒恥骨へまっすぐに両手を下ろす

②我慢できない陣痛になってきたら

・鼻から息を吸ったら「ヒッヒッ」と短く(各1秒程度)息を吐き、最後に「フー」とできるだけ長く(3~4秒程度)吐き切ります。

・息を吸うときに両手を恥骨のあたりから左右の脇腹に向かって滑らせます。「フー」と吐くときに両脇腹から恥骨に向かって戻ります。

・強い痛みが長引いてつらいときには「フー」を繰り返すと良いです。

③いきみたいけれど、まだいきんではいけないとき

・「フー・ウン」の呼吸でいきみを逃します。

・息を吸い、「フー」とできるだけ長く息を吐き、最後に「ウン」と力を抜きます。

・吸うときに両太ももを両手で下から上へさすり、吐くときには上から下に戻します。

体は、息を吸うときよりも吐くときにリラックスモードに入ります。できるだけ細く長く吐き、その呼吸に集中することで痛みの感じ方が緩くなります。

ソフロロジー法

ソフロロジー法は「出産の痛みを赤ちゃんを生み出すために必要なエネルギーとして肯定的に受け入れ、乗り越えること」を目指します。肉体的・精神的な余裕をもつことで、陣痛を恐れたり戦ったりするものではなく、産道の広がりや赤ちゃんの下降・回旋を進めるパワーとして受け止めていきます。

【陣痛がきたら】

①陣痛がきたら、砂浜で寝転び自分に向かってくる小さな波や大きな波を受け入れるイメージで、肉体的にも精神的にもリラックスしましょう

②強い陣痛には、腹式呼吸をしながら自分の呼吸に集中しましょう。同時にその陣痛によって産道が開き赤ちゃんの誕生が近づいていることを感じましょう。

③陣痛が収まったら目を閉じて脱力し、伸び伸びと淀みない呼吸を繰り返し、そのリズムに神経を集中させます。

妊娠中は腹式呼吸を通して筋肉と精神の緊張を解きほぐす方法を学ぶなど、十分な準備が必要です。心身共にリラックスした感覚を体と脳に覚え込ませ体と心への感覚を研ぎ澄ますことで、強い陣痛の中でもリラックスし起きていることを前向きに捉えられるようになることを目指します。

様々な出産の痛み対策

呼吸法だけでなく、出産の痛みを和らげる方法はたくさんあります。

腰をマッサージする

ケガをしたときに、とっさにその周囲を手で押さえることがあります。これは痛んでいる部位の周辺を刺激すると痛みを感じさせる経路を遮断することができるためで、「ゲートコントロール理論」と呼ばれています。陣痛中も、腰や仙骨周辺をゴルフボールやテニスボールなどを使ってマッサージしてもらうことで痛みを緩和することができます。また、いきみ逃し(いきみたいけれど、まだいきんではいけないと言われたとき)の際、ゴルフボールやテニスボールで肛門周辺を押さえてもらったのが良かったという話もよくお聞きします。腰や仙骨周辺のマッサージは妊娠中の腰痛にも効くので、普段からパートナーにマッサージをしてもらうと良いでしょう。本番に向けての練習にもなります。

分娩を進め、痛みを軽減するツボ

分娩に効くツボを覚えておけば、陣痛の合間も簡単にセルフケアができます。パートナーもツボを覚え、陣痛が始まったら積極的にケアしましょう。ツボを押す際のポイントは二つ。

①強く押し過ぎないこと。気持ちよい程度にしましょう。

②息を吐きながら3秒かけて押し、3秒かけて離します。

【三陰交(さんいんこう)】

足の内くるぶしから指4本分上にあります。女性ホルモンの分泌を促す「安産のツボ」とも呼ばれ、膣や子宮口が柔らかくなり出産が進みやすくなると言われています。予定日が近くなってきたら入浴時などに押してみましょう。

【太衝(たいしょう)】

足の甲の、親指の骨と人差し指の骨の間を足首に向かってたどっていくと、骨どうしの合流点があります。その手前のくぼみが「太衝」です。陣痛促進やストレス、不眠、冷えなどに効果があるので、分娩だけでなく産後もずっと使えるツボです。

【次髎(じりょう)】

仙骨上に左右対称に二つあります。血流を促進し体をリラックスさせたり、腰痛緩和に効果が期待できます。陣痛中やその合間などにテニスボールで押すと気持ちが良いです。

※分娩を促進するツボは、妊娠中には押さない方がよい場合があります。妊娠中に押す場合には必ず医師に確認しましょう。特に切迫流早産の方は注意してください。

その他の痛み対策

【不安を減らす】

不安と痛みは密接に関連します。出産時にできるだけ不安が無く、リラックスできるように工夫しましょう

・妊娠・出産・育児などについての想いをパートナーと共有する

不安の一番の原因は「孤独」かもしれません。妊娠・出産は女性にしかできなくても、パートナーと気持ちを共有したり一緒に考えたりすることが支えになります。

・病院の母親学級がある場合には受けておく

その病院でのお産の流れを知ったり、陣痛室・分娩室を見たりしておくと、少し余裕を持てます。

・お産の進行状況を質問する

あとどのくらいで生まれそうか、赤ちゃんは今どんな状態なのかなどを知ることで見通しが立ったり勇気づけられたりするでしょう。

・安心グッズがあれば持っていく

・パートナーの立ち合いができなくても、ビデオ通話などで繋がっておく

・陣痛の合間に、お茶を飲んだり音楽を聴いたりする

・好みのアロマを焚く

【体を冷やさない】

体が冷えると筋肉が緊張して痛みを強く感じることがあります。陣痛中に汗をかくとその後冷えることもあるので注意しましょう。

・室温をこまめに調節してもらう

・足湯

・毛布を増やしてもらう

【動き回る】

動くことで筋肉がほぐれ、リラックス効果があります。パートナーも付き添うことができれば、急に痛みが強くなっても安心ですね。

・歩く

陣痛室から出て歩き回っても良いか確認しましょう。

・ストレッチ

妊娠中から好きなストレッチを習慣化しておくと、陣痛の合間に気軽に行えます。

【可能なら食べる】

エネルギー不足になると、微弱陣痛や十分にいきめないことで分娩が長引いてしまうことがあります。できる範囲でエネルギー(特に糖分)を補給しましょう。ゼリー飲料など寝たままでも食べやすいものが人気です。

※陣痛中に吐き気が強い場合は、無理せず助産師さんなどに相談しましょう。

最も確実な出産の痛み対策:無痛分娩 

出産の痛み対策として最も確実なのが無痛分娩でしょう。しかし無痛分娩は希望者の増加に合わせて実施施設も増えているものの、2022年の調査では全分娩取扱い施設の26%程度となっています。無痛分娩を行っている施設でも、夜間や休日の分娩は対象外など条件が厳しい場合もあります。また、料金は病院により差がありますが10~20万円程度が目安です。無痛分娩を希望する場合には、早い段階で実施の有無や条件を確認しましょう。無痛分娩は、背中から注射をしてカテーテルという細い管を背骨のあたりに挿入し、局所麻酔薬を注入します。腹部~下半身の感覚を和らげるので痛みはほとんど感じなくなりますが、陣痛によるお腹の張りや赤ちゃんが下りてくる・出てくる感覚は感じられる場合が多く、いきむことはできます。もちろん意識はしっかりしています。一方で、以下のようなリスクもあります。

・分娩時間が長くなりやすい

・陣痛促進剤や吸引・鉗子などが必要になる場合がある

・産後に排尿がしづらくなることがある

・産後の発熱

また、非常にまれですが、麻酔の量や入れる部分のミスで中毒症状や意識消失が起こるリスクもゼロではありません。パートナーともよく話し合い、検討しましょう。

まとめ

出産の痛み対策は、準備が大切です。いざ出産!となったときに慌てないようよくイメージトレーニングや練習も必要ですが、パートナーともよく相談し一緒に準備を進めることで安心でき、さらなる効果が期待できます。痛み対策は様々ありますが、まず大切にしたいのは妊産婦さんを孤独にさせないことです。女性にとって妊娠・出産は嬉しいことばかりではありません。特に今はコロナウイルスの影響で立ち合い出産もままならず、妊産婦さんは孤立しがちです。だからこそ、パートナーが妊娠中から支えとなって不安な気持ちに向き合い、二人で赤ちゃんを迎える工夫と努力がとても重要です。安心して出産の日を迎えられますように!

監修:ラッキーインダストリーズ

ラッキーインダストリーズは創立1934年の日本で一番歴史ある抱っこひもメーカーです。長い歴史の中、多くの子育てをサポートしてきました。私たちの想いである「AMAZING LIFE WITH BABY」を元に、多岐にわたる社会貢献活動を実践しています。本コラムでの情報発信を通して豊かで実り有る子育てのサポートにつながれば幸いです。

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