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【母乳育児】つまずく原因は思い込み?知っておきたい8つの誤解 前編 母乳スタート・母乳量 助産師監修

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更新日 2025/07/30

こんにちは!助産師のユイです。これまでに新生児訪問や乳幼児健診、そして子育て支援センターなどで赤ちゃんの成長についてたくさんの相談を受けてきました。このブログでは、最新の研究を元にパパ・ママの心配や疑問に答えます!

今回のテーマは「母乳育児についての思い込み」の前編で、母乳育児を始めるときに多い思い込みや、母乳量についての思い込みについて紹介します。
正しい知識をつけて、母乳育児を楽しみましょう!

母乳育児をスタートするときに多い思い込み

まずは産後すぐ、母乳育児をスタートする時点でのよくある思い込みを紹介します。

思い込み①:直母の練習は分娩の疲れがとれてから始めよう

分娩は体の負担が非常に大きいもので、数日は疲れや痛みが強く残っている方も少なくありません。

そんなときに、周囲から「直母(直接授乳)の練習は疲れがとれてからにしては?」と言われることがあります。良かれと思って言っているのかもしれませんが、直接授乳は産後すぐに開始することが重要です。

母乳を作るホルモンは、出産し、胎盤がなくなることでたくさん分泌され始めます。
ただし、母乳を作るホルモンは放っておくとどんどん減ってしまいます。これを食い止めるのが、「直接授乳」なのです。
理想は、産後すぐ、まだ分娩台にいるうちに最初の授乳をすることです。

※出産などの状況によっては、直接授乳よりも優先しなければならないことがあるケースも考えられます。まずは「すぐに直接授乳を始めたい」という意思は伝え、もし無理な場合はその理由やいつ頃から開始可能かを確認しましょう。

思い込み②:まだ母乳が出ていないから出始めたら飲ませよう

「まだおっぱいが出ていないなら、今のうちにゆっくり休んだら?」という周囲の意見もよく聞きます。

しかし、「思い込み①」で紹介したように、母乳をつくるホルモンの分泌量を維持するには、生まれた直後から直接吸ってもらうことがとても大切です。
実際に母乳分泌が始まるのは、個人差は大きいですが、産後1~3日目が多いです。
分泌前から赤ちゃんが吸っていることで、分泌開始時には赤ちゃんがすぐに飲み取ることができ、乳腺炎の予防にもなります。

思い込み③:夜は赤ちゃんがよく寝られるようミルクを飲ませたほうが良い

個人差もありますが、母乳は消化が速いため、ミルクよりも早くお腹がすいてしまうことが多いです。「夜間に授乳が多いと、赤ちゃんやお母さんの睡眠の妨げになるから、寝る前はミルクがよいのでは?」という声をよく聞きます。

しかし、実は母乳を作るホルモンは夜間の方がよく分泌されるのです。
特に「母乳の量を増やしたい」「赤ちゃんにたくさん母乳を飲んでもらいたい」などの希望がある場合、夜間にミルクを飲ませると母乳量が減ってしまう可能性があります。
ただし、母乳は疲れやストレスでも減ってしまうため、お母さんのコンディションと相談することも大切です。もし、ママの体調も良く、母乳量を増やしたいと思っているのであれば、夜間授乳は頑張りどころかもしれません。

また母乳分泌量が多くて大変な場合は、夜間は特に多く分泌するため、ミルクをあげることでおっぱいがパンパンに張って乳腺炎のリスクも考えられます。夜間にミルクをあげるときはお母さんの体調の変化にも注意しながら進めましょう。

母乳量に対する思い込み

母乳量は見えないので、不安になるお母さんは多いです。ここでは母乳量に関する思い込みを紹介します。

思い込み①:おっぱいが張らなくなったから母乳が十分に作られていない

「母乳育児中はおっぱいは張るもの」と思っていませんか?

おっぱいは、産後数週間は張りが強い方が多いのですが、少しずつ赤ちゃんの授乳のリズムとお母さんの体のリズムが合ってきて、「赤ちゃんが飲もうとすると母乳を作り出すおっぱい」に変化してきます。
そうなると、母乳は作られるとすぐに飲み取られるため、おっぱいはあまり張らなくなります。

産後1か月前後になると「おっぱいが張らなくなってきて心配です」という相談が増えてきますが、張らないからと言って十分に作られていないとは限りません。
基本的には、赤ちゃんのおしっこ・うんちがいつも通り出ていて、体重も適切に増えているなら心配ありません
体重は、母子手帳に下図のような「成長曲線」が載っています。1か月に一度程度体重を計って記録をつけましょう。


引用:
子ども家庭総合評価票 記⼊のめやすと⼀覧表|成長曲線(男子)
子ども家庭総合評価票 記⼊のめやすと⼀覧表|成長曲線(女子)

成長曲線のラインの内側で、曲線とだいたい並行に体重が増加しているのであれば、安心です。
気になる点がある場合は、自治体の保健センターや母乳外来等で相談してみましょう。

思い込み②:赤ちゃんが吸いついて離れないから母乳が足りていない

赤ちゃんが長時間吸いついて離れない、無理に離すと大泣きする…などを相談される方もいらっしゃいます。
確かに「もっと飲みたい」と思って吸い付いている場合もありますが、単に「おしゃぶり代わり」として吸っていたいなど、理由はさまざまです。
上記「思い込み①」で紹介したように、おしっこやうんちの量や、体重が適切に増えているかをチェックすることで母乳が足りているかどうか大まかに判断できるでしょう。

また、吸いながら赤ちゃんがイライラしたり怒ったりしていると感じるなら、「おしゃぶり代わり」というよりは「もっと飲みたい」かもしれませんね。おしっこ・うんち・体重が問題なくても、食欲旺盛な赤ちゃんは「もっと飲みたいよ!」と伝えてくる場合もあります。

おしゃぶり代わりに吸って離さない場合は、お母さんさえ問題なければ吸い続けさせてもかまいません。ただ、あまり長く吸われていると乳頭が痛くなってしまうこともあります。その場合には無理なく母乳育児を続けるためにも、飲み終えた様子なら、赤ちゃんの口からおっぱいを離しましょう。
おっぱいを離すときには、赤ちゃんの口の端にママの人差し指を入れて吸っている圧を抜くと痛みなく抜けます。

また、まだゴクゴクと飲んでいるうちから乳頭が痛い場合は、授乳方法を見直す必要があるかもしれません。授乳方法は以下のコラムで詳しく紹介しています。

https://lucky-industries.jp/column/12386/

思い込み③:赤ちゃんが吸いつこうとしないのは母乳が出ていないから

「赤ちゃんはみんな、母乳を飲むのが上手なものだと思っていました」とよく言われます。

でも、赤ちゃんにも個性があって、母乳を飲むのが上手な子もいれば苦手な子もいます。また、とっても食欲旺盛な子もいればあまり自分からは欲しがらない子もいます。
赤ちゃんがおっぱいに吸い付くのを嫌がるようなしぐさをするときは、例えば以下のような理由が考えられ、単純に「吸い付かない=母乳が出ていない」とは決めつけられません

  • 乳房が張っていて吸い付きづらい
  • ミルクに慣れているのでミルクが欲しい
  • まだお腹がすいていない
  • 母乳がすぐに出てこないから怒っている

乳房が張りすぎているならば、少しだけ搾乳して乳頭付近を柔らかくしてあげるとよいかもしれません。
また、母乳は基本的には赤ちゃんが飲み始めるとその刺激で出す準備を始めるため、飲み始めて数十秒間は、出てこないのは普通のことです。「すぐに出てこないから嫌!」と怒っている場合はお腹がすきすぎてしまったり、もしかしたらくわえればすぐに出てくるミルクと混乱してしまっているかもしれません。
吸い付こうとしない原因を、母乳外来などで探してもらうとよいでしょう。

思い込み④:3時間待てずに飲みたがるから母乳が足りていない

「授乳間隔は3時間」と入院中に教わった方は少なくないでしょう。
でも、実際には、「早くほしいよ!」と3時間待たずに欲しがる食欲旺盛な子もいれば、3時間過ぎてもぐっすり寝ていて欲しがらない、という子もいます。

また、母乳は消化が良いためミルクよりも早くお腹がすくことが多いですし、母乳の方が飲むのに体力を使うのでちょっと飲んだら寝てしまってすぐにお腹がすく、ということもあります。

量が足りているかのチェックポイントは「おしっこ・うんち・体重」です。
おしっこがいつもよりも少ない、いつもより色が濃い場合は、足りていないかもしれません。また、うんちの量も少なければ要注意です。毎日出ない場合も、出た時にはどっさり十分な量があれば大丈夫でしょう。
このように、短期的には「おしっこ・うんち」で確認し、1~2か月に1度程度は体重を計って十分に成長しているか確認しましょう。

思い込み⑤:搾乳で十分な量がとれなかったから母乳が足りていない

「母乳は飲んだ量がわからないから不安になる」という話をよく聞きます。確かに、ミルクなら何ml飲んだかは一目瞭然なので安心感がありますよね。

母乳量を確認するためには、搾乳してみたり、授乳前後で赤ちゃんの体重を計って飲んだ量を調べるなどの方法があります。ただ、これらの調べ方は以下の点について注意が必要です。

注意1:搾乳よりも赤ちゃんの方が上手に母乳を出すことができる
母乳を飲むときには、赤ちゃんの舌は非常に独特な動きをします。これは母乳を効率よく飲み取るための動きで、母乳を飲んでいた子でも卒乳後は再現が難しいと言われています。
搾乳機を使っても、手で搾乳しても、赤ちゃんが飲み取るほどには取れていないということを知っておきましょう。

注意2:赤ちゃんは母乳を飲む量が毎回違う
赤ちゃんは、お腹のすき具合や、眠気、周りへの興味に応じて毎回飲む量が変化します。ミルクは哺乳瓶を口にしていればある程度自動的に口に流れ込んできますが、母乳は自分の口の動きで調節ができるためです。

ちょっと周りが気になったり眠くなったりして口を動かすのを止めてしまえば、その回の授乳量は少なくなるでしょう。
体重差で授乳量を確認する際は、一所懸命に十分な時間飲んだのか、あまり一生懸命飲んでいる感じではなかったのか等を加味して考える必要があります。

まとめ

母乳育児は正しい知識がとても大切です。赤ちゃんとの時間を楽しく過ごせるよう、知識をつけて、トラブルを予防しましょう!

また、後編ではおっぱいケアや、母乳育児中のママの体調不良・服薬などについての思い込みを紹介しています。

後編はこちら↓
【母乳育児】つまずく原因は思い込み?知っておきたい7つの誤解 後編:ケア・体調不良・生活 助産師監修

ぜひ参考にしてください。

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